片眼の猿(道尾秀介)の感想
片眼の猿読みました。
推理小説にありがちな前半の状況説明パートか退屈ということがないので、読んでて楽しかったです。
そして今回もやはり騙されてしまいました。
騙される快感を得るために本を読んでるので成功です。
ただ、読者を騙して終わりというより、作者の伝えたいこと、メッセージ性を強く感じる作品だったと思います。
ネタバレ
前半の導入で、超能力を持つ人たちの話だとてっきり思ってましたが、
結局この話は、
コンプレックスを抱えて生きてきた女性が、もっと大きな障害を抱えながらも、気にせず毎日を生きる人たちから勇気をもらう、そんな話でしたね。
現代では他人の自尊心を踏みにじるようなもの、つまり”猿を片眼に"させるようなものは世の中に溢れており、さらには自分がそのような存在になりうる可能性だってあります。そういった価値観から脱却して生きることができるなら人生は楽になるし、そうしていればいつか同じような、”他人の眼の数なんか気にしない”仲間に出会える。そんなことを学んだような気がします。
「眼に見えているものばかりを重要視する連中に、俺は興味はない」の精神で生きたい。
まあ実際はそれができたら苦労しないですがね(作中にも書いてありましたが)。見た目に左右されないような、真の承認を得るためには、承認欲求を手放さなければならないというのは禅問答のようなものですし、そういう意味ではある種の悟りなのでしょう。